仲良きことは

         【お題】(って、本当は最初から気づいてたけど)


 「お茶をどうぞ、キョンくん」
「ありがとうございます。朝比奈さん」
 キョンくんは今日も、私の淹れたお茶をひとくちすすって、
とても美味しいですって感想をくれます。
「はい。古泉くんもどうぞ」
「いつもありがとうございます」
 古泉くんもにっこり笑顔で、両手でお湯のみを支えて飲みます。
少しだけほっとゆるむ表情が、なんだか嬉しいです。

「キョンくん、今日は涼宮さんはどうしたんですか?」
 今、部室にいるのは、男の子2人と私と長門さん。涼宮さんの姿は
まだ見えません。私の質問にキョンくんは、チェスの手を止めて、
苦笑いで答えてくれました。
「あいつなら、岡部に呼びだされて生徒指導室ですよ。何をやったか
わかりませんが、どうせ説教でしょう」
「そうなんですかぁ……」

 それじゃあ今日は、編み物をしようかな。
鶴屋さんに約束したピンクの帽子が、もうすぐで完成するから。
私は、本を読む長門さんの隣に椅子を置いて、編みかけの毛糸と
棒針を持ってそこに座りました。

 部屋の中に聞こえるのは、長門さんが本をめくる音と、
キョンくんと古泉くんがチェスの駒を進める音だけ。
とっても静かで、ゆったりした時間です。

「古泉……お前、わざとやってんじゃないだろうな?」
「いえいえ、とんでもない」
「なんでそこでその手なんだ。俺にはわざと負けるように
打ってるとしか思えんぞ」
「そんなことありませんよ。あなたがお強いんです」
 ふふ。また、いつも通りキョンくんが圧勝したみたいです。
古泉くんが本当に弱いのか、キョンくんが言ってるみたいに
わざと負けてるのはわからないけど、古泉くんはいつも本当に
楽しそうだから、きっとそれでいいんですよね。

「弱いのはボードゲームだけかと思えば、こないだせっかく
持っていってやったマリカだってめちゃめちゃだったし……」
「あはは。テレビゲームは専門外ですよ」
 マリカって、ゲームの名前でしょうか。キョンくんが古泉くんの
おうちに持って行って、遊んだんですね。

「なにが専門外だ。ジャンケンすら弱いじゃねえか」
「おかげであなたがいつも一番風呂なんですから、いいじゃないですか」
 あれ? キョンくんって、そんなにしょっちゅう、古泉くんの
おうちのお風呂に入るんですか?

「じゃあ、腕相撲まで弱いのはどういうわけなんだ。腕力はあるくせに」
「あなたの手を握ると、力が出ないんですよ」
「よく言うぜ。床に押さえつけられたときは、ビクともしねえぞ」
 えーと……床に押さえつけられるシチュエイションってどういう……。

「まぁ、それはそうと、まだ途中のあのDVDどうしますか。
今日中に返さないと、追加料金とられちゃいますよ」
「ん、ああ。昨日途中で……寝、ちまったやつな」
「そうそう。寝てしまったやつです」
 あの−、なんでキョンくん、そこで赤くなるんですか−?

「……しょうがないな。続き見て返しに行くか」
「そうですね」
「それ見たら、今日は夜更かししないで早く寝るぞ。
今朝はあやうく遅刻するとこだった」
「僕のせいじゃありませんよ?」
「うるさいな」
 ああ……お泊まり前提なんですね……。


「ユニーク」
 いつの間にか長門さんが、本のページを繰る手を止めて、
2人の会話に聞き入っていました。思わず彼女の方を見た私に
ひとつうなずいて、もう1度ユニーク、とつぶやく長門さん。
 あのぅ、ユニークってなにがですか。
何がユニークなんですか、長門さぁん!

 ……って、本当は最初から気づいてたんですけど。

「長門さん……あの2人、あれで隠せてるつもりなんでしょうか……」
「大丈夫。涼宮ハルヒにバレなければ、問題はない」
「それはそうなんですけど……」

 キョンくん、古泉くん。
お2人が、とっても……そのぅ……な、なかよしさんなのは、知ってます。
でも、もうちょっとその……なんとかなりませんか。

 聞いてる方は、かなり恥ずかしいんです……。
 
                                                 END
(2009.11.17 up)
深読み上等。
ダダ漏れバカップル。