瞳閉ざさず愛を語ろう
06

 天井についた蛍光灯の光が、まぶしい。
白い無機質な灯りは、闇を照らす星や月明かりとか、やわらかな間接照明と違って、やたらとリアルで容赦がない。
 はぁ、と息をつきながら、古泉がちゃんと見ろとうながしてくる。手を伸ばしつつ、ついそちらに向けちまった目には、青いスカートからのぞく自分のアレと、その向こうに古泉のが、ギッチリと填ってるというか食い込んでるというか……なんか異次元としか思えない光景が映ってる。
 普段は大体あたりが暗い上、こうなるときはもう何がなんだかわからなくなってることが多いから知らなかった。けど今日は、皓々とすべてが照らし出される中で、そこに古泉のがジリジリと入っていくところがよく見える。
「ん……っ……入って……」
「もっと、奥まで入ります……よ」
 ぐちゅ、と生々しい水音がして、さらにねじこまれた。そんなに拡げられているのに痛くないのがまた不思議で、現実感がまるでない。全部入りましたよ、と言われて、そっと結合した部分に手を伸ばしてみた。ぬるぬるしたものが指につく。熱くて張り詰めたソレに触れると、ビクッと古泉が身体を震わせた。
「ほんっとに……入ってる……んだな……」
 すごいな、お前でいっぱいだ、とつぶやくと、古泉はまた小さく震えて、俺の脚をつかんだ手に力をこめた。なんかすごく、苦しそうだな?
「我慢してるんですから……あんまり、煽んないで、ください……」
 動きます、と宣言して、古泉はゆるゆると腰を動かし始めた。中がこすられる感覚に、思わず声が漏れる。ぐぷっとかじゅぷっとか表現するしかない音が、リズミカルに聞こえるのが、なんだかいたたまれない。スカートにかなり、濡れて変色してる部分が見えるんだが、あれは俺のから出てる先走りってことなんだな? すげえな俺。感じすぎじゃないのか。
 身動いたはずみでスカートが落ちて隠しそうになるのを手でめくりあげ、古泉はさらに見せつけるように派手にソレを出し入れする。湿った水音をたてつつ角度を変えて動かされるうちに、やがてそいつがあの場所をえぐった。いきなりびくっと大きく身体がはねて、喉から叫ぶような声があふれた。
「……っひ!」
 あれか。これが前立腺ってやつか。そこから背筋を一気に駆け上り、痺れるような快感が脳に響く。シーツを握りしめて腰を浮かせのけぞって、たまらずにさらに断続的に声をあげ続けた。
 俺の反応を見た古泉は、そこに狙いを定めて集中的に責め始める。激しく突き上げられて、せりあがってくる気持ちよさに全身をびくびくと震わせながら見上げると、そこには上気した顔を苦しそうにゆがめつつ、じっと俺を見つめる目があった。

 俺は少し、誤解していたかもしれん。
 古泉はいつも丁寧に時間をかけて抱いてくれるから、最中にわけがわからん状態になってるのは俺だけだと思ってた。初めての時は確かに必死だったが、慣れてきた今は余裕を持って、スマートにやってるんだとばかり。
 だけどどうだよ。目の前にいるこいつの、真っ赤な頬と泣きそうに潤んだ目。水滴を含んだ長い睫毛を揺らし、形のいい眉を寄せ、額にはびっしりと汗を浮かせて、それでも俺の表情の変化を一瞬たりとも見逃すまいとしている顔には、まるで余裕なんかない。みっともないくらいに、ただ俺に触って、俺で感じて、俺を求めてるって顔だ。
 そうか。お前は本当の本当に、俺に欲情してるんだな。
いくらセーラー服着てたって、この明るさの中じゃ女には見えないし、かえって男としての特性が強調されるだけだ。スカートの裾からのぞくアレとか、真っ平らな胸とか、筋張った手足とか。だから、見た目でごまかしてるわけでも、無理してるわけでもない。
 性別とか見た目とか、全部越えたところから……お前は俺を欲してくれてるんだよな。

 肌と肌がぶつかる音がする。イキたい、と小さく叫ぶと手が伸びてきて、しごかれてあっという間にのぼりつめた。吐き出した白濁が、スカートにも上着にも付着してべっとりと汚し、さらにカオスな眺めになった。
「気持ちい……ですか……っ」
「……んっ……すげぇ、いい……」
 古泉の息がさらに荒くなり、動きが加速する。ああ、もうすぐイクんだなと思ったとき、ふいに頭に浮かんだことを、つい口走った。
「中、に……欲し……から……っ」
 そのまま……って、何を言ってんだ俺はっ!
だけどその言葉が脳に届いたらしい古泉は、無言で俺を抱きしめてスパートをかけた。そこからすごい快感が襲ってきて、もうどうにもならない。どこもかしこも熱い。
 小さく息をつめる声が耳元で聞こえ、抱きしめる腕にぎゅうっと力がこもる。腹の中にじわりと広がる熱を感じて、それが馬鹿みたいに嬉しかった。

 だから俺はもう、迷ったりしない。
俺以外は欲しくないっていうんなら、お前に俺を全部やる。
お前が欲情する俺のこのカラダは、お前だけの専有物だ。
他の誰にも触らせないし、触らない。
ずっとお前だけのものってことで、かまわないからさ。

 ……ああ、念のため言っておくがな。
ココロの方はもう、3年くらい前からとっくにお前に盗られたままだからな?


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                                                      NEXT
(2011.07.31 up)
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ばかっぷる乙。