メリー・メリー・クリスマス
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 街を彩るイルミネーション。
どこからか流れるクリスマスソング。
毎年、思い出したように流れ始めるあの曲は、今の僕にはつらすぎる。
きっと君は来ない、だなんて。
 今日は12月24日で、世間はいわゆるクリスマスイブなのに、彼は僕の側にはいない。
彼は今日、二人で暮らしていた部屋を出て、遠くへと行ってしまった。
僕だけを、部屋に取り残して。



「それじゃあ、ここでお別れだ。古泉」
「…………」
「ちゃんと飯食えよな。あと風呂上がりに、いつまでも薄着でうろうろしてんなよ」
「…………」
 発車ベルの鳴り響く新幹線のホームで、彼は大きな荷物を詰めた鞄を片手に、優しい微笑みを見せる。僕はただじっと、その笑顔を目の奥に焼き付けるように、彼を見つめ続けた。
「それじゃ……俺は行くから」
 僕に背を向け、彼は新幹線のデッキに足を乗せる。振り返らずに車内に消えようとする彼の腕を、思わずつかんだ。
「……嫌です」
「古泉……」
「あなたと、離ればなれになるなんて……やっぱり僕には耐えられない……!」
 ぎゅっと腕をつかんだまま、低く叫ぶ僕に、彼は困った顔をした。
「もう決めたことだろう? わがままを言うなよ」
「でも……クリスマスなのに……こんな日に、なんで……っ」
 発車ベルはもう聞こえない。
もうすぐこのドアは、彼を飲み込んで連れ去ってしまうのだろう。
僕は彼の胸に額を押しつけて、小さく首を振った。
僕の肩をつかむ彼の手に、力がこもる。
「古泉……あのな」
 彼が、激しい感情をこらえるように息を吸った。

「ちょっとばーちゃんち行ってくるくらいで、愁嘆場はやめろ恥ずかしいっ!」

「だって、クリスマスなのに〜!」
「うるせぇ! しょうがないだろ! ばーちゃんが足折って入院したって言うから、ガキどもの面倒みてやらなきゃならないんだって、何度も説明したろうが! オフクロはじーちゃんの世話だけで手一杯なんだよ!」
 えぐえぐと泣き続ける僕を、彼はうっとおしいんだよバカと言い捨てて引きはがし、新幹線に乗り込んでしまう。途端にドアが閉じて、僕と彼は無粋な鉄の仕切りに引き離された。
ガラス窓の向こうで彼は、眉を寄せて僕をにらみつけていたが、やがて新幹線が動き始めると、やれやれという形に唇が動いた。
 ひらりと振られた手のひらの残像を残して、彼を乗せた電車はホームを出て行った。



 そんなわけで、僕は彼を見送ったその足で、あてどもなく街中を歩いている。
まぶしいイルミネーションが、チカチカと瞬いて聖夜を飾る。
目に入る人々は誰も彼もが楽しそうで、まるで自分だけが世の中に取り残されたような錯覚さえ引き起こされて、悲しくなった。
 身を寄せ合って歩く幸せそうな恋人同士の姿ばかりがやけに目につく。いつのまにか僕は下を向き、機械的に交互に踏み出す自分の足だけを眺めていた。
「どうぞ〜」
 声とともに差し出されたものを、つい受け取ってしまう。
それは新製品らしいチョコレートのサンプルで、顔をあげると配っていたのは、寒そうなミニスカートのサンタだった。
 彼女は僕の表情に何を読み取ったのか、少し首をかしげてから、ナイショねと言ってチョコレートをあと5つほどくれた。
「ありがとうございます……」
「元気出してね」
 にっこりと笑う彼女になんとなく会釈して再び歩き出しながら、僕はチョコレートの包みを破って中身を口にいれた。
少しほろ苦いチョコは甘さも控えめで、彼も好きそうだなと思う。
一緒に入っていたチラシには、ちょっぴりビターな恋人に、なんてキャッチフレーズが書いてあった。

 大きな声で発表できるものでないのが残念だが、僕と彼は、恋人同士といっていい関係だ。
お互いに大学生となり、ルームシェアをはじめて8ヶ月。恋人になってからはまだ半年。
去年までは僕たちは高校生で、同じ部活に所属しているというだけの普通の友人同士だったから、つまり今年は恋人として過ごすはじめてのクリスマスになるはずだったのだ。
 彼はそういった行事に凝ることを面倒がる質なので特別何かをする予定はなかったが、ちょっとごちそうを作ってワインを開け、ケーキを食べてゆっくり過ごそうくらいは考えていた。
それが数日前、彼にかかってきた母上からの電話がすべてをひっくり返してしまった。
 転んで骨折したという彼の祖母殿は誠にお気の毒だと思うし、無事のご快復をと祈る気持ちもあるけれど、少々の恨み節を垂れ流すことくらいはご容赦願いたい。

 しつこく聞こえてくるクリスマスソングに辟易して、僕は自宅の方へと足を向けた。
彼のいない部屋にひとりで帰るのが虚しくて遠回りを重ねていたけれど、いつまでもこうしていてもしょうがない。
僕は重い溜息をついて、のろのろとマンションへの家路をたどった。
 冷え切った部屋に入り、2LDKの部屋の広さに改めて気づく。
夕食を食べる気にもならなかった僕は、彼と飲もうと買ってあったワインを開け、部屋のソファでひとり、もらったチョコレートをつまみにグラスを傾けた。
静かなままではあまりに寂しくてテレビをつけたが、どうにも趣味ではないバラエティー番組ばかりだったので、DVDをかけてみた。
選んだディスクは、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』。
何度も観たものではあるが、今日のこの日にこれほどふさわしい作品もないだろう。
明かりをつけない暗いままの部屋で、僕はパペットたちが織りなすドタバタ騒ぎを眺めながら、ただボンヤリと時計の針が刻む音を聞いていた。
 彼が帰ってくるまで、あと4日。早く時間が過ぎればいいのに。



 クリスマスをするわよ!と宣言する、ストライプのタキシードを着た涼宮さん。
ツギの当たった顔で、くりすますってなんですかぁ?と首をかしげる朝比奈さん。
長門さんは包帯を全身に巻いた姿で無言でたたずみ、彼はといえばオオカミの耳をはやして、やれやれと溜息をついている。
 ああ、これは間違いなく、さっきまで観ていたDVDがベースの夢だな、なんて冷静に思ったとき、ふいに目が覚めて、自分がいつのまにか眠っていたことに気がついた。
夜明けはまだ遠いらしく、部屋の中は暗いまま。
明かりと言えば、とっくに終わったDVDがかすかな音をたてているテレビだけだ。
「うたた寝しちゃったのか……」
 ワインのボトルは、半分ほどが空になっていた。僕にしては、かなり飲んだ方だろう。
重い腕を持ち上げてリモコンを操作し、テレビを消す。
着替えるのも、ベッドに行くのもめんどくさい。
やはり飲み過ぎたのか、ガンガンする頭を抱えて、僕は目を閉じた。
「寒い……」
 ぶる、と身を震わせて寝返りをうとうとしてみると、身体が異様に重かった。
なんだか全身がだるい。寒い。なのに息は熱い。気持ち悪い。
二日酔いかなと一瞬思ったが、どうやらそれどころじゃなさそうだ。
風邪を引いたらしいと見当をつけたものの、だからどうすればいいのかという思考はさっぱり働かなかった。
 あとから考えれば、携帯で誰かに助けを求めればよかったのだと思い当たるけれど、その時の僕にできたのは、ソファから墜落するように降りてずるずると床を這い、脱ぎ散らかしたままだったコートを身体に巻き付けることくらいだった。
 はぁ、と吐いた息が熱い。朦朧とする意識の中、霞む視界に映る広々した部屋を眺める。
どこもかしこも寒くて暗い。
彼がいないというだけで、この部屋はまるで冷蔵庫の中みたいに冷え冷えとして、真冬の墓地みたいに漠として寂しい。
 急に心細くなって、彼の名前を呼んでみた。
あたりまえだが返事がないことがますます悲しくて、じわりとわいた涙で視界がにじむ。
 もしかしたらこのまま死ぬのかも、と思う。
まだ彼と、クリスマスもお正月も過ごしていないのに死ぬのは嫌だな、なんてのんきなことを考えながら、僕は再び眠りに落ちてしまったのだった。



 無秩序で無意味で無茶苦茶な夢ばかりを見た。
誰かの手が僕の額や頬をなでる。
夢の中でその手の持ち主は、離れて久しい母親や森さんにもなったが、そのほとんどが彼だった。
あと4日は戻らない彼が、今、僕に触れているはずはないのに。
馬鹿野郎、とつぶやく声すら聞こえる気がする。
 ああ、僕はたった一日彼がいないだけで、もう禁断症状が出ているらしい。
彼が、足りない。
彼に触れたい。
抱きしめたい。
キスしたい。
もっと。

「……も……と」
 ふと、意識が浮上した。
頬に触れていた冷たい手が、離れていく。僕はぼんやりとしたまま、うっすらと目を開けた。
「起きたか、古泉」
「……っれ? 夢か……」
 目を開けた僕の視界に映ったのは、彼だった。
ここにいるはずのない姿を見て、ああ夢かと納得する。
だって彼は、あと4日しないと帰ってはこないはずだから。
「馬鹿野郎」
「痛っ」
 額をビシッと指ではじかれて、いきなり意識がクリアになる。
僕が寝ているのは自分のベッドの上で、枕元に座って僕をのぞきこんでいるのは、確かに彼だった。
いつの間にかパジャマに着替えており、額には冷たいタオルが置いてある。
「あれほど風邪引かないよう気をつけろと言っておいたのに、何をやってるんだお前は」
「え……あれ? あなた、あと4日は戻らないはずじゃ……」
 目をしばたたきながらそう言ってみると、彼ははぁと深い溜息をついた。
「メールしても電話してもさっぱり返事しやがらねぇから、嫌な予感がして帰ってきてみれば、床に倒れて意識不明ときた。心臓が止まるかと思ったぞ」
「それは……ご心配をおかけしました……」
 恥じ入る気分で、布団を口元までひきあげる。彼はさすがに怒っている顔で、腕を組んだまま僕をにらみつけていた。
新幹線で数時間もかかる道のりを、とんぼ返りしてきたのだ。機嫌も悪くなろうというものだろう。
「まったく。お前のダメさはだんだん酷くなっていくな。留守番くらい、まともにできんのか」
 申し訳ないという気持ちと、そこまで言わなくってもと思う気持ちがないまぜになって、なんだか泣きたくなってくる。
とうとう涙がにじみそうになったとき、思わぬ声が聞こえた。
「何言ってんの! あんたの慌てっぷりだって、相当ダメだったわよっ」
 コン、という小気味いい音。
「痛てぇな! 殴るな!」
 思いがけない人物が、そこにいた。お玉を片手に仁王立ちしているのは、確かに涼宮さんだった。
気がつけばドアの向こうからは、朝比奈さんと長門さんまでが心配そうにのぞきこんでいる。
「気がついたのね。おはよう古泉くん、もう夕方だけど。気分はどう?」
「あ、はい……おかげさまで……」
「そ、よかったわ。お粥作ってるから、食べれるようなら食べて、お薬飲んでね」
 いつものような輝く笑顔でそう言って、彼女はもう一度彼の頭をたたく。
「クリスマスの朝っぱらにいきなり電話かけてきて、第一声が、古泉が死んじまうどうしよう、よ? 何事かと思ったわよ」
「馬鹿、ハルヒ! 言うなって!」
「うるさいわよ、キョン。なんとか状況を聞き出してタクシーで乗り付けたら、床に倒れてる古泉くんの横にキョンが青い顔して座り込んでるから、ホントに古泉くんが死んじゃったのかと思ったわよ」
 長門さんと一緒に部屋に入ってきた朝比奈さんが、優しい笑顔を僕に向けてくれる。
「キョンくんったら、自分の方が死にそうな顔してたんですよ? 朝から今まで、ずーっと枕元から離れないし、よっぽど心配だったのね」
 そっと布団の中で首をめぐらせて彼の方を見ると、彼はそっぽを向いて、組んだ足の上で頬杖をついている。
その顔は憮然としているが、頬が赤く染まっていた。
 そうか、と思う。彼は照れると怒るのだった。
 電話に出ない僕のことを心配して居ても立ってもいられずに、おそらく始発で戻ってきてくれたのだろう。
倒れたまま目を覚まさない僕を前にどうしていいかわからず、思わず涼宮さんに助けを求めたのはちょっと妬ける気もするが、彼らしいとも言える。
 うろたえて醜態をさらしてしまったことに対する気まずさと、僕が無事に目覚めた安堵でこんな態度に出ているのだと納得した。
「あの……ありがとうございました……」
「別に……同居人として、普通のことしただけだろ」
 同居人、を強調しつつ、彼はそう答えた。みなさんがいる手前、そういうことにしておかないとということだろう。
まぁ、涼宮さん以外には、もうバレてる気もするんですけど。

 いつの間にかリビングの方に戻っていた涼宮さんたちが、またひょっこりと顔をのぞかせた。
コートを着て、すでに帰り支度済みだ。
「じゃあ、キョン。あたしたちは帰るわ。食べるものちょっと用意しといたから、あんたもなんか食べなさいよ。今朝から何も口にいれてないんだから、あんたまで倒れちゃうわよ」
「う……」
「じゃあね。古泉くん、お大事に。風邪で大変な古泉くんには悪いと思うけど、久しぶりに5人集まれて少し嬉しかったわよ」
 涼宮さんは僕らに向けて、とても様になるウインクを投げ、メリークリスマス! と言ってさっさと踵を返す。
朝比奈さんは、またねぇキョンくん古泉くん、と可愛く手を振り、長門さんは小さな声で、あなたはもう大丈夫、とだけ言って二人のあとを追って行った。
 僕も、夢だけでなくSOS団が集まれて嬉しかったですよ、涼宮さん。



 さて、一方で彼はというと、涼宮さんが最後に言い置いていった発言のせいで、僕と目もあわせられなくなったようだ。
「あの……」
 おそるおそる声をかけると、彼は横を向いたままでぽつりと、どうせ、と言った。
「ふて腐れて、メシも食わずにソファで寝ちまったんだろう。そりゃ、風邪くらいひくさ。……あんまり、心配させるな」
 その声はあまりに静かでせつなげで、僕は、ああ、本当に心配させてしまったのだと思う。
床に視線を落とした彼の横顔は、ひどく真面目だった。
「本当に、申し訳ありませんでした……つい、寂しくて……」
「ホントにお前は、俺がいないとダメだな。おかげで寿命が5年は確実に縮んだぞ。どうしてくれる」
「僕の寿命を、その分差し上げますよ」
 馬鹿、とまた言って、こっちを向いた彼に頭をはたかれる。痛いです。
「お前がいないのに長生きして、どうしろってんだ」
「……えっ?」
 自分が言ってしまったことにはっとして、彼はあわてて自分の口を手でふさぐ。
またまた赤くなる彼をしばらく見つめ、そして僕は彼をそっと手招いた。
「あの、起き上がれないんで、こっち来てもらえませんか」
「……なんだよ」
「キス、したいです。すごく」
「お前な……」
 耳まで真っ赤に染め上げて、彼は病人のくせにとかブツブツとつぶやいている。
恋人になって、もう半年。
キスも、それ以上のこともとっくにしているのに、彼はいまだにこんな初々しい反応を返してくる。
本当に、可愛すぎて困る。
 しばし躊躇したあと、彼はしょうがないなとつぶやいて、僕の上に覆い被さるようにして唇をあわせてきた。
ちゅ、と軽くついばむようなキスを残して離れようとする頭を、両手で抱え込む。
反射的に逃れようとするのをさらにきつく腕の中に抱き込み、もう一度あわせた唇を割って、無理やり舌をねじこんだ。
「んっ……!」
 熱で乾いた舌を、彼の湿ったそれとからめあう。そういえば喉が渇いたな、なんて思いながら、彼の口腔内をむさぼって蹂躙する。
やがて満足して腕をゆるめると、彼はぐいと僕を突き放して、風邪をうつす気かこの馬鹿、とかピントのずれた抗議をしてきた。
「風邪のウィルスなら、長門さんがなんとかしてくれたみたいですよ?」
 最後に言っていた一言は、そういう意味だと解釈した。おかげで身体はすこぶる調子がいい。
あとは消耗した体力を回復させるだけだ。
「そうかそれはよかった……じゃねえよ!」
 馬鹿でもひくらしいお前の風邪なら、ウィルス死滅してたってうつりそうだ馬鹿! と、なんとも理不尽な文句を言いながら、彼は立ち上がって部屋を出て行ってしまった。
「また怒らせちゃいましたね」
 やりすぎたかな、と反省していると、部屋の入り口から彼が不機嫌な顔をのぞかせた。
「古泉、喉渇いたろう。水飲むか」
「あ、はい」
「お粥は食えるか? プリンもあるが」
「じゃ、じゃあプリンで」
「ん」
 顔も口調も不機嫌そのものなのに、甘やかされているような。もしかして、けっこう上機嫌だったり? なんだかよくわからない。
 そして彼が持ってきたプリンを見て、さらにわけがわからなくなった。
カップから出して皿にのせたプリンには小さな蝋燭がさしてあって火が灯り、傍らにサンタの人形がのっている。
なんだろう、この恥ずかしいセンス。
「あの、これは」
「まだかろうじて終わってないからな、クリスマス」
 どうやら、ケーキの代わりということらしい。
「ふて腐れて倒れるくらいクリスマスが楽しみだったんだろ? まぁ、ケガの功名ってやつだ。よかったな」
 ニヤ、と笑う顔に、すべての疑問がとけた。
そうですか。仕返しなわけですね。
「……いただきます」
「ちゃんとローソク吹き消せよ」
「誕生日ってわけじゃないのに、意味あるんですか」
「お前には様式美ってものがわからんのか」
 やれやれ、と彼の十八番のセリフをつぶやいて、僕はしかたなくローソクを吹き消した。
クリスマスそのものじゃなくて、あなたと過ごすことが楽しみだったんだとわかってるくせに、まったく意地悪な人だ。
 そう思いながらスプーンでプリンをすくった僕の耳に、笑い混じりの彼の声が聞こえてきた。

「まぁ、クリスマスは来年だって再来年だって来るんだ。これからいくらだって一緒に過ごせるんだから、今年はこんなもんでいいだろ」

 特に深い意味をもたせたセリフというわけでなく。
まるで当然で当たり前なことを言っただけ、みたいな口調で。
来年も再来年もいくらでも一緒にいようって、まるでプロポーズみたいな。
まったく、天然というのは恐ろしい。
 ……ああ、なんだかまた熱が上がってきた気がしますよ。
 僕のそんな気も知らずに、まだ顔赤いななんてつぶやいていた彼が、ふと思い出したように言う。
「あ、そうだ。バタバタしてたから、クリスマスプレゼントの用意はないぞ」
 いえ、そんなことはないですよ。
「……充分にいただきました。たった今」
「はぁ?」
 わけがわからないといった顔で首を傾げる彼に、僕はにっこりと微笑んでみせた。


                                                 END
(2009.12.24 up)
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王道な感じでお送りしました。
ダメ人間古泉に萌える。